令和8年4月1日から、民法等の一部を改正する法律が施行されます。今回の民法等の改正は、大きく6つに分かれています。
第1 親の責務に関するルールの明確化
第2 親権に関するルールの見直し
第3 養育費の支払確保に向けた見直し
第4 安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
第5 財産分与に関するルールの見直し
第6 養子縁組に関するルールの見直し
第1 親の責務に関するルールの明確化
父母が、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子供を養育する責務を負うことなどが明確化されます。
また、親権や婚姻関係の有無にかかわらず、子供を扶養する責務を負うとされ、その扶養の程度は子供が親と同程度の水準の生活を維持することができるようなものでなければならないとされます。
第2 親権に関するルールの明確化
父母の離婚後に親権者の定めの選択肢が広がり、離婚後の父母双方を親権者として定めることができるようになります。
親権者の決め方は、【協議離婚の場合】と【父母の協議が整わない場合、裁判離婚の場合」で異なります。
【協議離婚の場合】
父母が、その協議により、親権者を父母双方とするか、どちらか一方とするかを定める
【父母の協議が整わない場合、裁判離婚の場合】
家庭裁判所が、父母と子供の関係や様々な事情を考慮した上で、親権者を父母双方とするか、その一方とするかを定める
離婚後の親権者については、家庭裁判所が、子供自身やその親族の請求により、親権者の変更(父母の一方から他の一方/一方から双方/双方から一方)をすることができます。
第3 養育費の支払確保に向けた見直し
養育費の取決めに基づく民事執行手続が容易になり、取決めの実効性が向上するとともに、養育費の取決めがない場合にも、暫定的な養育費(法定養育費)を請求することができる制度が新設されます。
これまでの民法では、父母間で養育費の支払を取り決めていたとしても、養育費の支払がなかったときに養育費の支払義務を負う親の財産を差し押さえるためには、公正証書や調停調書、審判書などの「債務名義」が必要でした。
今回の改正後では、離婚のときに養育費の取決めをしていなくても、離婚のときから引き続き子供の監護を主として行う父母は、他方に対して、暫定的に一定額の養育費を請求することができるようになります。
その額は、子供一人当たり月額2万円です。
また、この暫定的な養育費の支払がされないときは、差押えの手続を申し立てることができます。
なお、改正法の施行後に離婚した場合に、この暫定的な養育費を請求することができます。
第4 安全・安心な親子交流の実現に向けた見直し
家庭裁判所の手続中に親子交流を試行的に行うこと(試行的実施)に関する制度が設けられます。また、婚姻中の父母が別居している場面の親子交流のルールが明確化されます。さらに父母以外の親族(祖父母等)と子供との交流に関するルールが設けられます。
家庭裁判所が、調停・審判において、親子交流の定めをする際には、資料を収集して調査をしたり、父母との間で様々な調整をします。こうした調査や調整に当たっては、手続中に親子交流を試行的に実施し、その状況や結果を把握することが望ましい場合があります。今回の改正では、親子交流の試行的実施に関する制度を設けられます。
また、父母が婚姻中に、様々な理由により、子供と別居することがありますが、これまではそのような場合の親子交流に関する規定がありませんでした。そこで、今回の改正では、婚姻中別居の場合の親子交流についてのルールが明確化されます。
さらに、これまで民法には父母以外の親族(例えば、祖父母等)と子供との交流に関する規定はありませんでした。そこで、今回の改正では、子供の利益のため特に必要があるときは、家庭裁判所は、父母以外の親族と子供との交流を実施するよう定めることができることとしています。
第5 財産分与に関するルールの見直し
財産分与の請求期間が2年から5年に伸長されます。また財産分与において考慮すべき要素が明確化されます。
財産分与は、夫婦が婚姻中に共に築いた財産を、離婚の際にそれぞれ分け合う制度です。
財産分与は、まずは夫婦の協議によって決めますが、協議が成立しない場合は、家庭裁判所に対して財産分与の請求をすることができます。これまで、この財産分与の請求をすることができる期間が、離婚後2年に制限されていましたが、今回の改正により、離婚後5年を経過するまで請求できるようになります
また、これまで民法では、財産分与に当たってどのような事情を考慮すべきかが、明確に規定されていませんでした。そこで、財産分与の目的が各自の財産上の衡平を図ることであることを明らかにした上で、考慮要素を例示しています。
(例示された考慮要素)
- 婚姻中に取得又は維持した財産の額
- 財産の取得又は維持についての各自の寄与の程度
- 婚姻の期間
- 婚姻中の生活水準
- 婚姻中の協力及び扶助の状況
- 各自の年齢、心身の状況、職業、収入
第6 養子縁組に関するルールの見直し
養子縁組がされた後に、誰が親権者になるかが明確化されます。また、養子縁組についての父母の意見対立を調整する裁判手続が新設されます。
未成年の子供が養子になった場合には、養親がその子供の親権者となり、実親は親権を失います。複数回の養子縁組がされた場合には、最後に養子縁組をした養親のみが親権者となります。
離婚した実父母の一方の再婚相手を養親とする養子縁組(いわゆる連れ子養子)の場合には、養親(再婚相手)とその配偶者である実親が親権者となります。この場合には実父母の離婚後に共同親権の定めをしていたとしても、他方の親権者は親権を失います。
15 歳未満の子供が養子縁組をするときは、その子供の親権者が養子縁組の手続を行う必要があります。これまでの民法では、父母双方が親権者であるときに、その意見対立を調整するための規定がなく、父母の意見が一致しなければ養子縁組をすることができませんでした。
今回の改正では、養子縁組の手続に関する父母の意見対立を家庭裁判所が調整するための手続が新設されます。家庭裁判所は、必要があると認めるときに限り、父母の一方を養子縁組についての親権行使者に指定することができるようになります。親権行使者は、単独で、養子縁組の手続を行うことができます。
その他
改正前は、夫婦の間で結んだ契約を、いつでも一方的に取り消すことができることとされていましたが、今回の改正では、この規定を削除されます。
改正前は、強度の精神病にかかって回復の見込みがないことが、裁判離婚の事由の一つとされていましたが、今回の改正では、この規定を削除されます
まとめ
今回の法改正では、父母が離婚した後も子供の利益を確保することを目的として、子供を養育する親の責務を明確化するとともに、親権、養育費、親子交流などに関するルールを見直しています。
今回のお知らせを記述するにあたり、以下の資料を参考にしました。
父母の離婚後の子の養育に関する子の養育に関するルールが改正されました改正されました
~親権・養育費・親子交流などに関する民法等改正の解説~
2026 年(令和8年)4月1日施行
法務省民事局参事官室
https://www.moj.go.jp/content/001449160.pdf


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